いつの間にかしているかも?消費税転嫁拒否

税金

消費税が上がるたびに国(公正取引委員会など)が注目しているのが「消費税転嫁拒否」。

具体例として(いずれも発注側から受注側に対して)
・消費税増税分を値上げするなら、取引を停止すると脅す
・消費税増税分の値上げを認めるが、その代わりに自社の製品等の購入数を増やせと要求する

などで、簡単に言えば強い側が弱い側に消費税を押し付ける行為。

しかし、具体例のような行為や拒否をしていないつもりでも、実は知らぬ間に転嫁拒否の加害者側になっていた、ということもある。

事業者向けに定期的に調査を行っており、国には毎月数十件程度の相談が寄せられている。

過去消費税が増加した2回のタイミングでは、100件を超す相談が寄せられた。

転嫁拒否はどういうものか、知らぬ間に加害者になってしまうのはどういうことか、解説する。

規制対象

・商品やサービスを購入する大規模小売事業者(前年度売上100億円以上)

・個人事業主、非人格社団等、資本金3億円以下の事業者から商品やサービスを購入する法人事業者

公正取引委員会は以上の2つを規制対象としている。
下請け事業者に対して強い力を持つ企業が、消費税分の値引きを強要するなどが目立つ。

当然ながら売り手が自主的に消費税分を値引きするのは問題ないが、そう見せかけて実体は強要である、という例が後を絶たないという。

下請け事業者からすると、いくら違反行為と知りながらも、通報すればその後の関係悪化や仕事がなくなるのではないかという恐怖を持つ場合も多数あり、相談に至らないことも多い。

場合によっては取引先に悪意がなくとも、弱い立場から言い出せないとか、双方が気が付かず、そのまま発覚していないことも。

具体的な例

1、減額
消費税分を後からリベートなどの形で割り戻しすることを強要するなど

2、買いたたき
買い手が消費税分を支払わないなど。消費税を理由にしなくても、正当性がない割引を強要することも含む

3、利益提供などの要請
消費税が上がった分、値上がりしたからと他の利益供与を要請する行為

4、本体価格での交渉拒否
消費税込みの価格でしか交渉に応じない行為

5、報復

公正取引委員会に通報した事業者に、不利な条件を提示するなど

知らぬ間にやってしまっている例も

実際に国に寄せられた相談

取引先に自社商品を委託販売してもらい、税抜きの販売価格に応じた手数料を支払っている。
消費税率引き上げ後も同様(税抜きの販売価格)のまま手数料を支払っているし、相手からも指摘はない。
これは問題になるか。

という質問に対し

増税前と同じ価格に据え置いており、買いたたきに該当する。

と国(内閣府)は回答している。

このように、悪意はなくとも、いつの間にか加害者になっているパターンや自身に悪意はないが相手からはそう思われているパターンもある。

勧告や公表対象にならないよう、取引関係を見直してみるのも良いかもしれない。

国の対応

いつの間にか通報される側にならないように

・公正取引委員会および中小企業庁
書面調査やヒアリング、立ち入り検査、指導を行う

・公正取引委員会
勧告および公表

繰り返しや大規模に転嫁拒否を行う事業者に対しては、繰り返し何度でも是正勧告をするという。

最近の相談状況

ことし6月に消費税価格転嫁等総合相談センターに寄せられた相談件数は134件。

うち総額表示に関するものが65件(49%)、便乗値上げに関するものが3件(2%)、そして消費税転嫁拒否に関するものが19件(14%)だった。

比率はどの年月でも大体同じだが、消費税が10%上がったタイミングの2019年10月前後で、最も相談が多かった同年9月で相談全体が2821件、転嫁拒否に関するものはそのうち322件あった。

なお、消費税が8%に上がった2014年4月前後で最も相談が多かったのは同年3月は4142件も相談があったのに対し、転嫁拒否の相談はわずか176件(4%)だった。

国の周知活動が強化されたこともあるかもしれないが、事業者の間で消費税転嫁拒否が以前より注目されているのは間違いない。

取材協力 内閣府 消費税価格転嫁等総合相談センター

筆者プロフィール

teatime

編集長 例のりす

決済を利用するすべての人へのメディア「UP College」の編集をしている人。なんでも興味を持ってしまい、広く浅くを通してしまって何かと手に負えなくなっている。

対象がインドア・アウトドア問わずなのでコロナ自粛生活だろうと解禁されようと相変わらず時間が足りていない。